どんな風に生きるのか。

2023年04月14日 13:00

変な題名でびっくりさせちゃいましたか?

お久しぶりになってしまいましたが、
いかがお過ごしでしょうか?


突然ですが。
あなたの大切な人やお世話になった人が
急にこの世を去ってしまったら、
どんな気持ちになりますか?


悲しいに決まってる、という言うまでもないことを
言わせるな、と言われそうですが、
別れって本当に突然です。



5月28日、浦安市文化会館でご一緒するはずだった
チェリストで指揮者の、桑田歩先生が4月5日、57歳の若さでこの世を去られました。

以前から、体調についてのお話は色々な方から伺っていたのですが、2023年に入り、コンサートにも出演され、きっと良くなってくださる、きっと大丈夫!
ご一緒できる!と心から願っておりました。



桑田先生とは、2020年のコンサートのオーディションではじめてお会いしました。
様々な有名なオーケストラで、首席チェリストとしてご活躍されていましたが、指揮もされていて、このオーディションでも審査員をしてくださっていました。


私は、オペラの世界は自分には合わないと研修所で気づき、ご縁や自分なりの活動のやり方で細々演奏を続けてきたソプラノ歌手です。


本来、フルオーケストラとの共演は、どこかに所属していたり、繋がりがないと難しく、オーディションすらまともに受けて来なかった自分には無理だと、最初から諦めて、このオーディションにもはじめは書類を送りませんでした。

しかし、お世話になっている関係者の方々からも背中を押されて、これが最後と思って受けたら、合格したのです。


選んでいただいた理由をあとから伺い、自分がこれまで信じてやってきた声や表現のことをやっとご理解してくださる方に出会えた、と心の底から嬉しくなりました。


声のことに関して、自分なりに勉強してきました。
大学卒業後、二期会オペラストゥーディオの養成所を1年だけ勉強した後も、レッスンを受けたり、実際に舞台に立って、お仕事の中でも色々と学んできました。
長年かけて色々学んで、というのは音楽家はみんなやっていることです。

終わりのない学びを探求し続けることは、
喜びでもあり、時に苦しみでもあります。

でも好きだから続けているのです。
みんな、自分を信じて続けているのです。

ただ、それが認められるかはまた別のお話です。
どんなに頑張っても結果を出しても、思うようにいけるかどうかはわかりません。


そんなことを何十年と繰り返し、半分諦めも入り始めた頃、オーディションで桑田先生に出会えたのです。


今年に入り、メールでご挨拶しようかどうか迷いました。ご体調もあるし、リハーサルでは数回ご一緒しましたが、4月にきっとお会いして直接ご挨拶できると信じて、少しでもご負担にならないようにと気遣いでもありましたがご挨拶メールをしませんでした。

本当に後悔しています。

相手に伝えるということ、話すということは非常に大切です。

混雑時に電車の中でも交わされない『済みません』とか、『降ります』とか、『乗ります』とか、『ありがとうございます』とか、こんな簡単な一言を発しないで、押し合い、度付き合い、挙句喧嘩になる人もよく見かけますが、仕事柄、凄く違和感を感じます。

簡単な挨拶もできない、これは、日本人あるあるです。

最近では、お子さんたちもなかなかこれがきちんと言えない子が多いのです。
コミュニケーション不足からも来ていると思いますが
挨拶や伝えることは、大切なことです。

そう思って日々生活する中で自分でも気をつけて実践していたにも関わらず、ご挨拶メールの一本を遠慮して打てずに、お会いできない日を迎えてしまったこと、
なんと表現したらよいかわからない気持ちです。
自分の不甲斐なさを感じています。

本日、桑田先生にお別れのご挨拶をしてきました。

たくさんの音楽家はじめ、たくさんの人に愛された桑田先生は、日頃から人を大事にし、私のような個人で活動しているソプラノ歌手にも温かい言葉をかけてくださり、おそらく私以外の音楽家にも誰にでもそのように接していらっしゃったはずです。


きちんと伝えることを大切に、
今この瞬間を大事にしながら、
相手を思いやり温かいコミュニケーションを取り、
時に厳しく、違うものは違うときちんと伝えることができる人、優しさと厳しさのバランスを取りながら
前向きに学び挑戦し続けられる人、そして愛される人でありたいし、そのためにも人も自分も愛していきたいと思います。


桑田先生とご一緒できないことが、本当に残念ですが
追悼と感謝の気持ちを込めて、歌わせていただきます。


桑田歩先生のご冥福をお祈り致します。
感謝を込めて。


東京オペラコミック 栗林美智瑠



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